第45章 これってそういう意味?
「残りは持ち帰ってくれ」
『え、この間ご飯食べた時にケーキもらったのに?』
「バレンタインのお返しだからね」
『えートリュフがホールのパイになるなんて、なんかごめんね』
「実は父さんにもチョコを分けたんだ。これは父からも材料費もらっているから」
『待って征十郎のお父さんも食べたの!?しかも1枚噛んでんの?』
「褒めていたよ」
『仲良くなり過ぎじゃない?』
「悪いことじゃないだろう」
彼が言った通り仲良くなったことは間違いなく良いことだが、どうしてここまでそうなってしまったんだと顎に手を添え考える
答えが分からないことを考えていてもしょうがないかと思考を止めた
彼が他の子からもバレンタインのチョコをもらっていたのを思い出し、彼女たちにもアップルパイを返したのかが気になってしまう
『他の子にもアップルパイあげたの?』
「いや、既製品のチョコを返したよ」
『なんであたしだけアップルパイ用意されたんだ?』
「名前のチョコが、1番美味しかったから」
征十郎の赤い両目がこちらに向く
彼のその色が変わることにならなくて良かったと、意識する場所を変えながら「溶かして生クリーム混ぜただけだけど」と返した
これ以上減ることない残りのアップルパイは、彼の手によってケーキボックスに仕舞われる
「そろそろ帰ろうか、送ってくよ」
『うん。いつもごめんね』
「寄ってもらったのはこちらだからね、気にしないでいいよ」
立ち上がりマフラーを巻き直し、玄関へ向かうと外の空気が入ってくるせいか寒い
なんだか鼻がむずむずしてくる。制御できなくて撒き散らすのも嫌なので腕で口元を押さえた