第44章 お返しくれなきゃあげないぞ
「名前ちゃん、帝光バスケ部の監督になったんだってな」
『うん。もう出回ってんだね』
「月バスで見たぜーバスケ部の聖母!」
『は、はははは…』
「しかも、髪色オレンジになったんだな、目もグラデーションになってるし」
『うん。なんなんだろうね』
自分の髪を人差し指で巻き取る。もう慣れてしまったが、久しぶりにあった彼にとっては新鮮なものだろう
ふと重さを感じ、巻き取った髪と逆方向を見ると和成が身体に巻き付いているのに気が付いた
「名前ちゃん、マフラーつけてくれてんだな」
『和成こそ、つけてんじゃん』
「当たり前でしょ!名前ちゃんからせっかくもらったもんなんだし!」
『うん。分かったけどさ、何であたし抱きしめられてんの?』
「バレンタインだから?」
『バスケ部にも似たようなやつがいるんだよね』
「ふーん?」
大きい犬を思い出しながら和成には抱きしめ返さず、長いオレンジ色の髪を見る
元々のオレンジ色に夕焼けのオレンジ色が重なっていた
マフラーもオレンジ色だしなんだかなあと、引っかかる胸の内を気にしないふりしながら、和成の髪を撫でる
『和成身長いくつ?』
「オレ?170くらいじゃね?」
『そっか』
普段背のでかいヤツらに囲まれているせいかなんだか落ち着くなと思いながら、まだオレンジ色ではない彼のジャージを見つめた