第44章 お返しくれなきゃあげないぞ
第3者side
チョコを2つもらったので食べながら歩く紫原の横で苗字が楽しそうに笑っている
その後ろでは残ったメンバーでこそこそと会議が始まっていた
「バレンタインに用があるなんて、彼氏とデートっスかね」
「苗字にかぁ?」
「いや、可能性が無くはない
名前が持っている紙袋の中に通常のサイズとは別の大きめのサイズのが入っていた」
「オレ赤司っちが彼氏じゃないって聞いてたから居ないと思ってたのに…」
「誰にもあげてないんですか?」
「名前ちゃんがわざわざ別のラッピングで持ってきたんでしょ?渡す以外にありえないよ」
「これから渡すのが用事ってことか?」
「確かに去年も14日に急いで帰っていたな…」
「お前らは一体なんの話をしているのだよ」
頭を抱える彼らだが緑間は話が分からず眉間に皺を寄せている
しばらくそのまま歩いていたが、T字路に差し掛かったところで彼女は彼らがこれから行く方向とは逆方向を指さした
『じゃあ今日こっちだから、また明日ね』
「…ああ」
『ちゃんとテスト勉強するんだよー』
軽い足取りで帰る苗字の後ろ姿を見つる
彼女の姿が小さくなってきたところで何を思ったのか急に黄瀬が笑顔になった
「ねね!名前っち尾行しよ!」
「そんなこと許されるわけがないのだよ」
「…するか」
「あ、赤司!?」
「…赤司君がいいなら行きましょう」
「うん!行こうテツ君!」
「面白れぇもんが見れるならいいぜ」
「ほら緑間っち!紫原っちも!」
「なぜオレまで行かなければならないのだよ」
「ええ~アイスは?」
「あとで!」
距離を取って苗字の後を着いていく
その先頭には人の観察と影の薄さに長けている黒子がおり、歩いていると色々な人に話しかけられ、その姿はいつかの春に見た誰かのようだった
会話が気になった彼らは気配を潜め、聴覚を集中させる