第44章 お返しくれなきゃあげないぞ
教室に戻ると涼太があたしの席に座り、その前に紫原が座って話していた
こちらに気が付いた涼太がブンブン手を振り、紫原がゆっくりと振り向いて目が合う
「名前っちどこいってたんスか!?オレずっと探してたんスよー!」
『虹村先輩のところにちょっと用があってね』
「それってバレンタインのチョコー?」
『うん』
「なんで主将と桃っちには渡すのにオレにはくれないんスか!?」
「オレも欲しいー 」
『外国では男性から女性へ花束渡すんだって』
「虹村先輩にあげてるじゃないっスか!も~紫原っち花!花買いに行こうっス!」
「え~、オレ花買うならお菓子買いた~い」
「名前っちのチョコもらうには何かあげる必要があるんスよ!」
「え~、じゃあー…はい」
紫原から何かを思い受け取るとちょっとお高めなチョコレートがあたしの手のひらの上に乗っている
『誰かからもらったの?』
「ううん。お返しくれるならくれるって言うから朝買ったんだ~」
『紫原が…あたしのために…!』
「名前ちんチョコ好きでしょ?」
『うん!大好き!』
ガバッと紫原に抱き付いてお礼を言いすぐに離れる。持っていた紙袋から1つ取り出し紫原に渡すと、彼の瞳が輝いた
「名前ちん!これ食べてもいいのー?!」
『うん。こちらこそありがと紫原』
「おいしそ~今食べたいけど…もったいないな~」
彼の手のひらに乗ると小さく見えるなと考えながら彼からもらったお高いチョコレートを紙袋へと仕舞うと、横から大きいワンコが抱きついてくる
「紫原っちずるいっス!」
『どさくさに紛れて抱きつくな』
「さっき名前っちも紫原っちに抱き付いてたじゃないっスか!」
「オレは別にいいけど~」
『ほら、あたしは紫原から許可もらってる』
「つまりそれは名前っちから許可取ればいいってことっスね!」
『出さない』
「じゃあ抱き付いていいっスよ!」
『嫌だそれよりそろそろ席戻って』
腕を広げる涼太の意見を却下して席からどかし、自分のスクールバックに紙袋を入れて次の授業の準備をする
流石バレンタイン当日だけあり教室からはチョコのにおいが充満しており、先生が「甘ったるい」と言っていたのは笑ってしまった