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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《1》

第44章 お返しくれなきゃあげないぞ





「そういえば苗字さん、虹村の告白はどうしたの?」

『…は』


周りの視線が集中し脳が一瞬真っ白になる

そう言えば監督になる前、体育祭の借り物競争でそんなことがあったことを言われて気が付いた

すっかり忘れていたと血の気が引く感覚と、恥ずかしくなって頬が熱くなるのは共存出来るんだと、ここで初めて知る


「…苗字さん、もしかして」

『はい。記憶から抜けてました』

「いい度胸じゃねぇか、苗字」

『返事、しなきゃダメですか?』


出来ることなら現状維持がいいと考え彼の表情を見る

虹村先輩はこちらから視線を逸らし、後頭部を掻いてから「あー…」と何とも言えない声を出してため息を吐いた


「ったく、仕方ねぇな。まだ待ってやるよ」

『虹村先輩…!』

「だいたい返事は分かってるけどな」

『…すみません、それなのに待たせて』

「おう。こっちこそチョコありがとな」

『それより、その手にあるいっぱいのプレゼントは…』

「さっき歩いてる途中でもらった」

「虹村はいいよなーそうやってチョコもらえて」

『その中に血が入ってないといいですね』

「は!?」


何のことかと聞きたそうな彼らによくあるおまじないだと説明する

好きな人のチョコに自分の血を入れると両思いになるという…衛生的に大丈夫なのか心配になってしまうおまじない

彼が本命チョコをもらったのかは知らないが、たくさんのバレンタインチョコを彼は凝視する


「…もうアイツらには渡したのか?」

『いや、まだです』

「じゃあ苗字さんのチョコ最初にもらった男子オレ!?やったー、虹村ザマァ」

「うるせーな!なんでもいいだろ」

『じゃあ、クラス戻ります。失礼しました』

「バイバイ、チョコありがとね」

「じゃな」


手を振る彼らに手を振り返し教室を出ていった途端、虹村先輩への冷やかしが教室から響いてきてこちらも恥ずかしくなる

待ってくれるとは言っていたが彼は来月卒業してアメリカに行ってしまう

答えは出ているのに、それを突き付けるのが怖いから逃げているだけ


『なんか、ずるいなあ』


賑わう廊下のおかげで小さくつぶやいた言葉は誰にも聞かれず消えていく

早くこんな気持ち消してしまいたいと考えながら、歩く速度をあげた





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