第44章 お返しくれなきゃあげないぞ
それから代わり映えしない日々を送り、気が付けば2月
世間はピンク色のハートで街やスーパー、コンビニまで飾りつけされている
この間までは鬼もいたが節分が過ぎ去った今、店頭からはいなくなってしまった
「名前っちー!もうすぐ何があるか知ってるっスか?」
『学年末テスト』
「違うっスよ!明日はバレンタイン!今年も名前っちからのチョコ欲しいなー」
『ワンコにチョコはあげられないなー』
「オレ犬じゃないっス!」
「オレはー?」
『お返しくれるならあげようかなー』
「オレも!オレもお返しあげるから欲しい!」
『ワンコにチョコは…』
「だーかーら!オレ犬じゃないんス!」
『早く席戻んな』
いいところでチャイムがなったので騒ぐ涼太たちを席に戻るよう指示し教科書を開く
バレンタインの前日だけあり、周囲の女の子は授業そっちのけで何のチョコを作るかなんて話も聞こえてくる
なんで女子から男子に渡さなきゃいけないんだと疑問には思うが材料は既に揃えてある
もし今日征十郎が自主練をするなら先に帰らせてもらおうと考えながら授業を受けた
『…さて、やるかあ』
そんなバレンタイン前日の夜、さつきとは手作りを作らないことを条件に交換する約束もしたし、去年も交換した人物がいるので作らなければ困ってしまう
中学生になったからか、友チョコ交換は増えた
それこそあまり話したことないクラスの子ですら交換してくれるほど
そこまで難しいものを作ろうとは思ってなかったため、溶かしたチョコレートに生クリームを入れ丸めコーティングする作業を繰り返す