第43章 百人一首大会
「オレと戦いたくないのかい?」
『どうせ負けるよ』
「勝てるかもしれないじゃないか」
絶対ないしどうせ本物の大会でもない
負けて失うものもないし良いかと頷くと主催者のところへ連れて行かれる
「先ほど話した苗字です」
「助かります!ありがとうございます!」
申込書を記入するように言われ記入していると、横で征十郎がなぜ急な欠席が出たのかを問いかける
その問いに「顔が墨だらけだから恥ずかしくて出られない」と連絡が来たお係員は話す
誰のせいかすぐに分かったのでジト目で見つめると、彼は笑っていた
ルールもいまいち分からないので戻って征十郎に教えてもらい、久しぶりの百人一首の札を眺める
「人数合わせだ。負けても平気だよ」
『やるなら勝ちたいじゃん』
「そうっスね!百戦百勝っスもんね!」
「黄瀬、それは部活の理念なのだよ」
集合がかかったので、指定されたところに行くと大学生くらいの男性が座っていた
こちらの顔を見て舐めたような表情をした気がしたので、本気で行かせてもらうことにする
『ありがとうございました』
最近一緒にいる人物が多才な人だらけなので忘れかけていたが、あたしとて補正が付いているんだったと敵陣に残る札の数を見て思う
まるで前から知っていたかのように上の句が読まれれば下の句の位置がすぐに分かり、相手の手が伸びる前に払わせていただいた
どうやら勝者1番乗り、音をたてないように気を付けながら勝利の報告をしカラフルな頭のところへ戻る
「名前さんすごかったですね」
「やっていたのか」
『やってないよ』
なんだか頭を使ったせいか甘いものが食べたいと、紫原が持っていたわたあめの袋を開けこっそり分けてもらった
続く2回戦と3回戦、奇数になったせいで戦わなくていい人が出るのだがそれは両方征十郎が引いていた
こっちが人数合わせで頑張ってんのになんだコイツと怒りをぶつけ、準々決勝に進出する
『勝負なし…』
準々決勝は幸か不幸か奇数のため相手無しとなる
3回連続征十郎に当たらなくて良かったと考えながら、元旦早々何を熱くなっているんだと冷静な自分もいる
だが選手側になった自分はなんだか新鮮で楽しい
糖分を補給するため屋台に行き戻ってくると、征十郎は既に勝ち上がっていた