第72章 カナヅチについて
『征十郎』
「なんだい?」
『あの、指が首にあたって…心臓バックバクなんですけど』
「紐を結ぶ限り無理なことなんだが」
『…だよね』
「でも、紐を結ぶのを頼むのが俺で良かったよ」
『…なんで?』
「俺以外の男が#NAME1#の首に触ると考えると、少々妬けてしまうよ」
『っ…征十郎って、ストレートだよね』
顔が触らなくても分かるほどに熱い
恐らく、ていうか絶対周りから見たら真っ赤だろう
「…俺達のこと忘れてないッスか?」
『あ、ごめん』
「僕は慣れてるんで大丈夫です」
「…それ悲しくないんスか?」
「ミスディレクションのためと考えれば悲しくないです」
「…黒子っちって…本当男らしいっスよね」
『見た目ヒョロッヒョロなのにね』
「え」
『でもそのギャップもいいと思うよ』
テツヤの髪をわしゃわしゃと撫でて微笑む
テツヤはあまり納得した様子ではなかったが、少し嬉しそうな表情を浮かべた