第35章 崩壊のはじまり
「ここまで必死でずっと言いそびれてしまいましたが、今のボクがあるのはあの日赤司君と名前さんが手を差しのべてくれたからです」
「……オレは何もしていないよ。確かにあのときオレは黒子に可能性を感じて声をかけた
けどそこからはい上がってきたのは黒子自身の力だ。しかもその力があってこその今年の優勝だった
礼ならばむしろオレが言いたいくらいだよ」
『征十郎の言う通りだよテツヤ。あたしはテツヤにはヒントを見せただけで、何も教えてはいない
テツヤがここまで来れたのは、テツヤ自身の力だよ』
「ほっとするのはまだ早いよ。オレ達にはもう1年ある
来年に向けてまた気をひきしめなければ、3連覇のためにね」
「……はい」
そう言って目線を合わせて笑う。彼らの表情は見ていてとても清々しく、これから起きることを信じたくなくなるくらいだ
「…ところで、赤司君と名前さんはなぜ今日こんな早くに?」
「昨夜コーチから連絡があってね、職員室に行ったが早く着きすぎてしまってまだだったのでこれからもう1度…」
「いた、赤司君!名前ちゃん!…とアレ!?テツ君!?」
「桃井、君もか?」
走ってきたのか息を乱しているさつきが慌てた様子で体育館に入ってくる
…それ以外にもパニックとかいう理由もあるんだろうなと、冷静を装うため何も考えないよう努力する
「…どうした?もしやもう、コーチと話したのか?」
「…それが、白金監督が……倒れたって…!」
目を見開く征十郎とテツヤに対し、あたしは内容を知っていたからか罪悪感を胸に抱いて目を瞑る
…これ以上キセキを壊さないで欲しいと思いながら、走り出す征十郎を追いかけた