第35章 崩壊のはじまり
「……まあ、似合ってんじゃね?」
『虹村先輩が褒めた…』
「うるせーな褒めちゃ悪いのかよ」
『ありがとう…ございます?』
ポツリとお礼を呟いて彼を見ると、虹村先輩の頬と耳が赤く染まっていることに気づく
なんだか意識してしまって頬が熱を持ってくるので、冷やすには心もとない手の平を顔に当てる
「何だ虹村、告白でもしたんか?」
「ち、ちげーよ!」
そんな様子を見て勘違いした先輩の1人が駆け寄ってきて、虹村先輩とあたし達の間に入ってきておちょくってくる
虹村先輩は真っ赤な顔をして全力で否定しており、なかなか見ることが出来ない光景にふと笑みがごぼれた
『虹村先輩ほんと顔赤い…ふふ』
「「…」」
『…え』
虹村先輩の顔の赤らめ方と否定の仕方が可愛いなぁと思って笑うと、いきなりピタリと動きを止めた先輩達
それにびっくりして先輩2人を見るが、目を見開いているだけで特に変化はない
「苗字さん、そうやって笑った方が良いよ」
『…さっきの、ですか?』
「その方がより可愛く見えるよ」
『急に褒めてくれるじゃないですか…』
「お前も、そんな笑い方できんだな」
『虹村先輩は貶してきてますね?』
「褒めてんだよ」
素直に褒めることが出来ないのかと制服のままバスケを始めた大勢を見ながら思っていると、その輪には入っていない征十郎がこちらに歩いてくる
「名前」
『ほい』
「虹村さんと何を話しているんだい?」
『強いて言えば、虹村先輩の顔が赤くて可愛いって話かな』
「んな話してねえだろ!」
焦る様子の虹村先輩にけらけらと笑う
既に先ほどの笑い方を忘れてしまったと、どうやって笑っていたのか思い出そうとすると征十郎があたしの手を掴み、虹村先輩のことを見て目を細めた
「やはり虹村さんも」
「赤司もか、まー見てれば分かっけどな」
「苗字さん、さすがだね」
『ははは、いぇーい』
彼らの会話を流しつつ先ほどのバスケがどうなったのか見ていると、さつきが「制服のままゲームしないで!」と可愛く怒っており止まっていた
あと1年以上制服を着るにしても、彼らはどのくらい身長が伸びるのだろうか
買い替えが必要なんじゃないかと考えていると、征十郎から手を離される