第35章 崩壊のはじまり
「ってことで、新主将は赤司にやってもらう」
「はい」
2学期の始業式が終わった午後、虹村先輩達3年は引退
悔いも涙もなく、やりきった表情で体育館から別れを告げた
それが終わり、それぞれが3年生にお礼の言葉を言ったり遊ばれている情景の中、あたしは虹村先輩に話しかけられ壁に寄り掛かりながら2人で話をする
『虹村先輩が引退ですか…信じられませんね』
「オレもまだ心のどっかで信じきれてねぇよ」
『…卒業後は、アメリカですか?』
「そうだな。親父と弟と妹も12月に渡るし、それ以外ねぇだろうな」
『弟と、妹ですか』
そう言えばそんな話もあったようなと古い記憶を呼び起こす
ふいに虹村先輩の表情を見ると、どこか影のある顔をしていた
『…兄弟仲良いんですか?』
「小せえからな」
『じゃあきっと可愛いんでしょうね』
どんな容姿をしているんだろうなーと想像すると、虹村先輩がそのまま小さくなった姿が浮かんできてくすくすと笑う
そんなあたしを見た虹村先輩は困ったように眉を寄せた
「やっぱオレ、お前のこと中2に見えねーわ」
『…まあ、仕方ないかもしれませんね』
「否定しねーのか?」
『そのまま、疑ってて下さい』
「…じゃ、そうしといてやるよ
それよりお前、その目と髪どうしたんだ?」
『全中の決勝の後から変わったんですけど』
「そういうことじゃなくて理由だっつの」
『…あたしも知りませんよ』
下ろしている髪はオレンジ色に変わったが始業式でも教室でも誰にも触れられることはなかった
元々カラフルな髪を持つ彼らと違い、夏休みを経て変わったため少しドキドキしていたのだが、教師からはおろかクラスメイトからも何も言われず拍子抜けしてしまったのは記憶に新しい出来事である