第5章 新入生歓迎会
非常階段をのぼると、先ほどの先輩たちが追ってくる。姿を見られているのでここから教室に行っても追いかけられるだけで無理かもしれない
最上階まで行ったところで、もう行くところがないとあきらめかける
「ど、どうするんスか」
『頼りない男だなあ…』
先輩があと少しで登ってくるというところで飛ぶ。雨樋を支えに一気に下まで降りた
こんなこと元の世界ではできなかったと考えながら、目を丸くする黄瀬を見る
「えええ!?」
『ほら黄瀬君!続いて!!』
「あ~もう、はいっス!」
先に下まで降りて時計を確認する。残り時間はあと少し、あの先輩たちに度胸がなければ捕まることはないだろう
降りてきた黄瀬に「こっち!」と指示し再び走り始めた
気が付けば別の空き教室。もう見つからないだろうと座り込む
『あ~疲れた』
その言葉と発すると、黄瀬がこっちをキラキラした目で見ながら飛びついて来る
「すごいっスね!苗字サン!ソンケーするっス!」
『あ、ありがとう…』
「名前!下の名前何ていうんスか!?」
『…え、名前だけど』
最初の眼差しとは違い目を輝かせてニコニコしている。そんな様子を見て、ああこれは…と察した
「名前っち!オレは黄瀬涼太!よろしく!」
『うん、黄瀬君』
「えー、オレ名前っちには名前で呼んで欲しいっス」
『涼太』
「よろしくっス名前っち~!」
手を掴みブンブン上下に振られる。こうも態度が一気に変わるとなんともやりにくい
困っていると彼は「あ!」とどこからか携帯を取り出す
「アドレス交換しよ!あ、でもほかの子には内緒で…」
『ええ…』
「お願い!名前っちとメル友になりたいっス~」
『あーもう分かった!分かったよ!』
そうしてアドレスを交換するとニコニコしながら「ありがとーっス!」と笑う
ちょうどそこに歓迎会の鬼ごっこ終了の放送が流れ、校庭に集まるように指示が出された