第33章 海に行こう
「名前ちゃん、テツ君!」
「桃井さん」
『…さつき、』
「どこいってたの?探してたんだよ!」
「波にさらわれました」
『泳げないのに助けに行って溺れた』
「…え?」
さつきは何があったか分からないのか、クエスチョンマークを頭上に浮かべるが探している彼らに「みんなーテツ君と名前ちゃんいたよー!」と声をかける
その声に反応して、みんながホッと胸を撫でおろすのが確認できた
「2人とも、大丈夫っスか?!」
『泳げないだけ』
「それもともとだよねー?」
「なにやってんだよテツ、心配したぜ」
「存在感を出すのだよ」
「それは無理な話ですね」
「何はともあれ無事でなによりだ」
一回休憩しようと浜辺に戻ると浮力がないせいで体が重く感じる
濡れた体をタオルで拭い、髪を束ね直していると誰かのお腹が鳴った
「安心したら腹減ったな」
「お昼ご飯食べよー」
「お昼という時間はもう過ぎてますけどね」
「ちょうど空いてる時間じゃない?」
「じゃあご飯に行こうか」
『紫原パーカー貸してもらえる?』
「いいよー」
「オレのパーカ着てくれても!『涼太のはパス』」
訪れた浜辺のお店、通称海の家は混んではいたがピークの時間を考えればまだ空いている方なのだろう
順番が来るまで待っている間にも彼らは見事にナンパされて断るのが大変そうだった