第33章 海に行こう
『...あれ、テツヤ?』
ふと気付くとテツヤがいなくなっていて、キョロキョロと周りを見て探すが姿はない
またなんかどこか行ってしまったのかと考えていると、少し離れたところでテツヤが溺れかけているのを見つける
それに急いで駆け寄ってテツヤの腕を掴んだ
『テツヤ!』
「…名前、さん!」
『テツヤ泳げるんじゃなかったの!?』
「先ほど人とぶつかってしまって…その時に転んでしまい波にさらわれて、足をつりました」
『…不運が続いたんだね』
「それより、名前さんこんな深いところ来て大丈夫なんですか?」
『あ』
そうだ泳げないんだったと意識した瞬間に沈んでいく体。気づくと海の中にテツヤと居て、テツヤが驚いた顔をしていた
海水の中に差し込む光が綺麗だと思う余裕もあるが、喋ろうと口を開けると空気しか出てこなくて焦る自分がいる
『…』
「!」
一か八かでテツヤの足を目を集中させて見る
腕を伸ばし、異常がある彼の足につった時の対処法を施すと輝きはなくなり上手くいったんだと確信を持つ
『(息が…続かない)』
薄れていく意識の中、テツヤはそっとあたしを抱き抱えて泳ぎ出すのが見えた
勢いよく上がると、酸素が入ってくる。息が出来るって素晴らしいと当たり前のことを思いながら、少し脳がくらくらする
「名前さん!」
『テ、ツヤ』
「無事で良かったです」
『ありがと。助けに行ったのに、助けられちゃったね』
「でも名前さんが来なかったら、ボクは溺れてましたね」
『じゃあ、お互い様だね』
「そうですね」
そのままテツヤに腕を引かれ、元居た場所に戻るとどうやらテツヤといなくなったことで探されていたらしい
心配そうな表情でさつきが駆け寄ってきた