第32章 巻き込まれた夏祭り
『いっけー!紫原!』
「おっけ~」
「ちょ、紫原っち!花火こっちに向けたら危ないっスよ!」
『危ないと思うなら逃げればいい』
「…名前っち男らしいっス」
あたしの頭を撫でながら「もうちょい大人しくなってもいいんスよー」という涼太に、それは無理なお願いかなーと心の中で考えるが、決してそれは言わない
ひとしきり花火で遊ぶと、緑間が何かを持って寄ってくる
「あと残ってるのは線香花火なのだよ」
『それで賭けしようか!全員で線香花火やって、最後まで残った人が勝ち!』
「お!オレ参加な!」
「みんなでやろー!楽しそう!」
「やってやらんこともないのだよ」
「全員線香花火持ったか」
「火をつけるんスね!」
『一番最初に落ちた人はアイス奢ってね』
みんなの「せーの」の掛け声で線香花火に火をつけて、玉を落とさないようにと動きを止める
ちなみに1番に落ちたのは大輝だった。アイスを奢ってもらう予定、2番は意外と紫原で3番は涼太、4番はほぼ同着で緑間とさつきで5番があたしだ
つまり残っているのはテツヤと征十郎で、やっぱりこういう勝負でも征十郎は勝つんだなーと心の中で納得する
「あ、落ちちゃいました」
「じゃあオレの勝ちのようだね」
「…赤司君にはやっぱり勝てませんね」
「そう簡単に負けるわけにはいかないからな」
線香花火の匂いが残るこの場所で、また来年も同じように仲良く過ごせたらいいなと願いながら星空を見上げる
それを実現できるかどうかは、あたし次第