第32章 巻き込まれた夏祭り
「そうだ、きーちゃんも一緒に屋台回ろ!」
「いいっスよ」
そう言うと涼太はさつきの耳元に口を持っていき内緒話を始め、しばらくするとさつきの頬がぽっと赤く染まり、挙動不審になる
「や、やだな、そんなっ、き……気にしないで!
一緒に回ろうよっ、うん!そのほうがテツヤ君も楽しいと思うしっ!」
「……まあ、桃っちがそう言うなら、いいんスけどね」
ニヤニヤとさつきのことを見て恋の応援をするような素振りを見せる涼太のことをテツヤは不思議そうに見ている
なるべく2人が隣になれるように涼太の隣に立った
「んじゃあ、夜店見に行こっか!ちなみに、今までどこを見て回ったの?」
「とりあえず、スーパーボールすくいと輪投げはしました。成果はこれです」
「輪投げで、テツ君がこれ取ってくれたんだよ」
そう言って、スーパーボールで膨れ上がったビニール袋を掲げて見せるテツヤと抱えていたぬいぐるみを見せるさつき
それを見た涼太は少し顔を引きつらせて「それ黒子っちの趣味だったんスか…」と言った
「いえ、桃井さんの趣味です」
「え、これってかわいいよね」
『…グロカワイイね』
「うーん…桃っちの趣味って、よくわからないんスけど…
あ、でも、そのぬいぐるみを抱いてればナンパ避けにはなるかも」
「そうかな?」
「なるなる。それを目につくように抱いてれば、まあ普通は声かけないと思うっス」
「それに目立つ黄瀬君が一緒なら、かけられることもないと思います」
「いやぁ、それほどでも……」
「褒めてないです」
「えっ、そうなんスか!?」
「私よりきーちゃんのほうが、声かけられるんじゃない?」
「あー…でも、名前っちと桃っちが一緒から大丈夫だと思うな。持ちつ持たれつってやつで」
『…それあたしにプレイッシャーかけてるよね』
「…ボクって、お邪魔ですか?」
「そんなことないよっ!!」「そんなことないスよ!」
あまりのぴったりしたハモり具合に思わず顔を見合わせて笑い合って歩き出した