第32章 巻き込まれた夏祭り
「はい、残念賞~!」
「…難しいですね」
「そうなのだよ」
「すみません、桃井さん」
「そんなっ!謝らないで!テツ君の気持ちだけですっごく嬉しかったから!」
「ですが……」
「残念賞もあるよ」
「!」
「ほい、この中から選んでねー」
店主が出してきた残念賞の景品が入っている段ボールにはデカデカと「不用品」と書いてあり、少し気分が滅入る
「……桃井さん、欲しいものありますか?」
「えっと…じゃあ、これ!」
「桃井、それがいいのか…!?」
「さっちん、考え直したらー?」
『…グロカワイイって言うのかな、それ』
さつきの手にはクマのぬいぐるみが抱かれている
そのクマは顔はつぎはぎだらけでジェイソンのお面を斜めに被り、背中には凶器がはみ出したリュックを背負っている
「え!?いいじゃないこれ、テツ君はどう思う?」
「…桃井さんが気に入ったものがいいと思います」
「なんでそんな投げやりなの!?ちょっと変わってるけど、そこがかわいいと思うんだよね」
「女子の考えることはよくわからないのだよ…」
『あたしも女子だけど分からん』
「でも、気に入るものがあってよかったです」
「黒ちんて、何でもうまくまとめようとするよねー」
「え」
紫原の言葉にテツヤは固まったがぬいぐるみを抱き締めたさつきがお礼を言うと「どういたしまして」と綺麗に微笑んでいた