第32章 巻き込まれた夏祭り
「ここの輪投げはなかなか個性的な景品が多いので、オレのラッキーアイテム候補に入れておこうと思ったのだよ」
「どれを狙ってるの?」
「あの中段に並んでいる、なまはげのこけしだ」
「……個性的だね」
「ああ。滅多にない逸品だ
あれならばラッキーアイテムがなまはげでも、こけしでも、子供を泣かすものでも、いつでも対応できる」
「…いろいろ大変だね」
「そうなのだよ」
『緑間、その解釈絶対違う気がする』
緑間はラッキーアイテムにいったいどれだけお金かけてるんだろうと、的に対し見事に輪を外している彼の状況を見て考える
「ボール当てならば、難なくクリアできるのだが、輪投げとなると勝手が違う
しかも中段の棚だ。的確に狙う必要があり、難しい……」
「そんなに難しく考えることないんじゃないなー?投げれば入るって」
「紫原、何も考えてないお前には分からないのだよ」
「そうかなぁ…」
紫原は店主の人にお金を払って輪を受けとると、何か呟いてひょいっと手を伸ばした
その手は腕が長いせいで景品の棚にかなり近づいており、 紫原はごみを捨てるかのように軽く放ったのだが、軽々しくそれは目当ての物に入った
「ほらねー、簡単だしー」
「紫原…オレは初めてお前をコート以外で使える男だと思ったのだよ!」
「ミドリン、言ってること酷い!」
『それは失礼だよ緑間』
「え?何が?」
「紫原、あのこけしも取ってくれ!」
「え~、なんで~?」
「良いから、取るのだよっ!」
「……紫原君、緑間君はあとでりんご飴をおごると言っています」
「え?そうなの?」
『さっき食べたばっかりじゃん!』
「黒子!なに、勝手なことを言っているのだよ!」
「紫原君には、これが1番効果的だと思いますが」
「っ…!仕方ない。紫原、金も払うしりんご飴もおごってやる」
「うん。分かった~」
景品を軽々取っていく紫原を見ているといつの間にか周りに人だかりができていた
別にこれはパフォーマンスとかではないんだけれどもと考えるが、確かに2mの人を普段見る機会はない
そりゃあ人だかりも出来るかと考えながら先日まで不仲だった緑間と紫原を見守る