第32章 巻き込まれた夏祭り
「それはそうと紫原、これからオレは将棋の大会に出ることになっていてね
優勝商品の中にお菓子の詰め合わせがあるんだ」
「本当~?もらうもらうー」
『優勝すること前提なんだね…』
「赤ちんが負けるとは思えねぇしー」
『…まあ、そうなんだけど』
両手に繋いでいる手に感じている温もりが心地いい。そのまま手はつなげられたまま夏祭りの会場へとやってきた
やはり紫原は背のこともありかなり目を引くわけで、それに伴いあたしと征十郎も注目を浴びる
「あ、黒ちんだー。あれ、さっちんも居るんだねー」
『テツヤにさつき?』
紫原が混みを掻き分けていくので、手を繋いだままのあたしと征十郎は一緒に進まなければいけない
急に立ち止まった彼にぶつかってから顔を出すとさつきとテツヤが2人でおり、彼らの手にはスーパーボールが入った袋が握られていた
「黒子、桃井。こんな所で会うとはな」
『昨日ぶりだね、まあ夏休みも練習で会うんだろうけど』
「赤司君と紫原君と名前さんで一緒に遊びに来たんですか?」
「ううん。たまたまそこで会ったんだよー」
『あたしと征十郎は約束してね』
「赤ちんは、これから将棋の大会に出るんだってー」
「将棋の大会?ここでやってるの?」
「知り合いに出てくれと頼まれたんだ。参加者を確保したいらしい」
「面白そうな対戦相手がいるのですか?」
「さぁ……」
そう言って目を細める征十郎。そして腕時計をちらりと見て時間を確認するような素振りを見せる
「そろそろ始まる時刻だ。…NAME1#、紫原、あとで連絡する」
『うん、またね』
「うん。よろしくね~」
征十郎と繋いでいた手が離れたことが名残惜しかったのは温もりが恋しいからだろうと、涼太の時のように言い聞かせた