第30章 プールの授業
『…テツヤとあたしって身長同じくらいだよね』
「そうですね」
『足、プールの底につく?』
「つかないですね。つけたらつけたで溺れます」
『だよねー…あ、でも背伸びすれば歩けるかな』
あたしとテツヤがつま先立ちしてギリギリ顔が出るくらいの深さということは背の小さい人だと溺れるんじゃないだろうかと、クラスの小さい子を心配しながらプールの中を適当に歩く
これはあたしに泳げるようになれと言っているのか、それとも溺れろと言っているのかと悩みながら彼らの後を歩いていると、改めて紫原の背の大きさが分かる
『…紫原でかいな』
「オレは別に普通に足着くから~」
『背が高いって良いよね』
「色々不便だけどね~」
『あ』
喋っているとプールの底で足が滑り水の中へと引き込まれる
慌てず水中から出なきゃと驚いて瞑っていた目を開けると、あたしの手首を掴んでいるテツヤと目が合う
そのまま手首を引かれて水中から出ると、心配という感情が顔に出ている涼太といつも通りの紫原が居た
「名前っち!溺れたっスよね大丈夫っスか!?人工呼吸いる?!」
『いらん。水吸い込んでないから大丈夫。テツヤ、助けてくれてありがとね』
「いえ、すぐ助けることができて良かったです」
「急に消えたからビックリした~」
『ごめん。足が滑った』
「プールだとそれがあるんスよねー…」
『海だったら滑らないのかな』
「それっスよ!」
『…は?』
「え、黄瀬ちんどうしたの~」
急な大声に驚くあたしと紫原だが、当の涼太の表情はニコニコしていた