第4章 入学式と振り分けテスト
「苗字サン!」
『おおお、おう?』
「入試の時はありがとっス!」
覚えていたのかと驚いたが、それよりも彼があたしの名前を知っていることに驚く
「それだけ伝えたかったんス
あれがなければ、落ちてたかもしれなくて…マジで
あ、オレ黄瀬涼太!オレたち、同じクラスなんスよ!」
『ああ、苗字名前です。よろしく』
「苗字サン、今何してんすか?」
「あー……バスケ部の、振り分け?待ってる」
「なんか盛り上がってると思ったんスよねー、
バスケ部かーどーすっかな―どーせやったらできちゃうからなーたぶんどれも…」
返答に困っていると彼も困ったように笑った
ここで「バスケ部入ろうよ!」なんて誘う気は全くない。来年どうせ入ってきてくれるからそこまで待っていようと彼の顔を見ていると、賑わっている声が体育館から聞こてくる
『部活動って強制じゃないし、入らなくてもいいんじゃない?』
「そうッスよね!じゃあ苗字サン、また明日!」
『また明日』
お礼を言われたが懐かれているような感覚はない
征十郎とまだ壁があった時のようだと、ひらひらと手を振って彼の背中を見送る
そのまま待っていると体育館が静かになる。振り分けが終わったんだろうかと体を伸ばした
『さて、と』
体育館が静かになってタイミングを伺い体育館を覗くと、ちょうど2軍が終わったらしい
1軍の発表があることに皆びっくりしているようで、しっかり征十郎の姿が残っていることに笑顔が浮かぶ
「8番 青峰大輝、11番 緑間真太郎、23番 紫原敦、29番 赤司征十郎」
体育館内がどよめく。1年生から1軍に選ばれるなんてどんな人なのかと後方の人はなんとか一目見ようと背伸びしている
『まあ、適度に頑張るかぁ』
これから彼らと一緒に3年間過ごすのだ
一生懸命は疲れてしまうから、適度に頑張ろうとまた体を伸ばした