第27章 艷仁知をしよう
『涼太、荷物持つからちょうだい』
「女の子に荷物持たせるわけにはいかないっスよー」
『そんな訳にはいかないよ』
「じゃーはい!」
差し出された荷物ではなく涼太の手だった。まったく意味が分からず叩くと違うと怒られる
説明もなく手だけ出され、さらに怒られるのは理不尽ではないだろうか
「オレの手を持って欲しいっス!」
『…それは手を繋ぐという解釈で良いですか?』
「その通り!さすが名前っち!」
『…はいはい』
涼太の左手を右手で握りそのまま歩き出す。子供のように手をブンブンと振る彼は楽しそうだ
「名前っちの手、小さいっスね」
『涼太の手がでかいんだよ』
「そうっスかー?普通だと思うんスけど」
『どこが?背に比例してるんじゃないの?』
「紫原っちくらいデカかったらなー、片手でいろいろ出来そうっスよね」
『涼太はそのままでいいと思うけど』
「…名前っち好き!」
『道端で抱き着くな!ハウス!』
くっついてくる涼太を引きはがしたが、結局手を離してもらえたのは学校に着いてからだった
『まだ時間あるから生徒会室行ってくる』
「えー!一緒に教室行かないんスか!?」
涼太と2人で戻るとまた面倒なことになりそうだから避けたいと思い時計を見ると、生徒会室で仕事をして教室に戻る時間はなさそうだ
いや、急げばあるが、そもそも教室に戻らなくてもいいのでは?と生徒会の特権を使おうとする
『時間ギリギリだし、征十郎と部活行くね』
「HRいいんスか?」
『居なくても平気でしょ。荷物だけ頼むね』
「リョーカイっス!」
どうせ「帝光祭の準備、残れるやつは手伝ってくれー」で終わるんだろう
上履きに履き替えて、涼太に手を振り生徒会室を目指す
そのときになんだか手が急に冷たくなった気がして寂しくなってしまったのは内緒にしておくことにした