第25章 試験前の部活停止
「もう大丈夫です」
「問題解決が早ぇぇなオイ!いや、つか大丈夫か苗字!」
『…膝擦りむいたくらいかと』
最近怪我が多いなと思いながら起き上がり、無事なベビーカーを見て安堵を溜め息を吐く
征十郎が赤ちゃんを抱いたままこちらに駆け寄ってきた
赤ちゃんは先ほどまで泣いていたが、今は泣いていない。胸を撫でおろす
「大丈夫かい?オレがベビーカーを止めれば良かったね」
『ううん。赤ちゃんが無事でよかった』
膝はちょっととんでもないことになっており、制服も汚れているがはたけば落ちる
赤ちゃんを2人で見守っていると母親が心配そうな表情をしながら駆け寄ってきた
お礼を言われている征十郎は「誰にでもできることです」と言っていたが、虹村さんに「いやできねーだろ」とツッコまれていた。全く同じ気持ちである
「これ、使ってください」
『…ありがとうございます』
救急車を呼ばれそうになったが丁重にお断りをすると、ティッシュと絆創膏をもらった
途中の公園で靴と靴下を脱ぎ、水道で膝を洗い流す。流石に屈むとあれなので、征十郎が手で水を掛けてくれている
「大丈夫かい名前」
『染みる…けど大丈夫…』
「よく動けたなあそこから」
「見えてから動いただけですよ」
『うう…痛い…』
だけど後悔はない
無人とは言えベビーカーが突っ込んできたらトラックの運転手も嫌だろうと1人うんうん頷いていると、征十郎が流し終わったのか膝にティッシュを当て水分を取ってくれる
「すみません虹村さん、絆創膏用意してもらっていいですか」
「おう」
一瞬主将、副主将に何させてんだと思ったが致し方ない
虹村先輩から受け取った絆創膏を征十郎が両膝に貼ってくれたので赤黒くなっていた膝が隠された
「もう大丈夫なのか」
『絆創膏貼れば平気でしょう。多分』
「すぐ治るだろう。部活も当分ないし、ゆっくり休むんだ」
その後虹村先輩はお父さんが入院しているであろう病院の方へと向かい、あたしは征十郎に送ってもらって無事家に辿り着いた
商店街で征十郎が受け取った豆腐が無事だったか心配だったか後日聞いたところ、問題なく食べたと彼は言っていた