第24章 頼って
『…あたしは部活の理念なんか捨てちゃえって思うけどね』
「…へえ?」
『前にも言ったじゃん、征十郎は肩に力入れすぎだって
別に虹村先輩みたいな主将目指さないで、征十郎なりの主将目指せば良いじゃん』
「だが伝統は伝統だろう」
『伝統なんかくそくらえって思うよ。負けたからって死ぬわけじゃないし』
イライラしてきてしまって悪くもない彼らに当たりそうになる。甘いものが足りていないんだろうか
彼らだって帝光の理念の被害者なのだと思いながら息を吐いて落ち着かせる
『ごめん、なんか言い方良くなかったね』
「そんなことはない。名前の言うことも一理ある
確かに負けたって死ぬことはないからね」
「…極論なのだよ」
『でも間違ってないでしょ』
そうだ。別に死ぬわけじゃないんだし捕まるわけでもない
ただの中学バスケ部にみんな期待し過ぎじゃないだろうかと考えながら雑談をし、緑間と別れたところで征十郎が腕を差し出してくる
「腕、貸そうか」
『…いや、大丈夫だよ。そういうところで反感買ってるっぽいし』
「他に人はいないだろう」
『いないけど、1人で歩けるよ』
「…そうか」
結局マネージャー業務も座り仕事だがこなしたんだ
彼の腕はそのまま元の位置に戻る。借りても良かったんだが、今借りたくなかった理由はわかっている
そのままいつも通り家の前まで送ってもらい、2人で立ち止まった
「お疲れ様。足、お大事に」
『ありがとう、気をつけてね』
「…今度なにかあったら、すぐ言ってくれ」
『うん。分かった』
彼に相談できる内容だったらと、心の内で追加しておく。言ったらどうせ怒られてしまうだろう
そんな出来事の翌日、征十郎からの指示により灰崎は退部してしまった
テツヤが辞める彼に対し追いかけて何か言いに言ったのは知っているし、内容も分かっている
彼もいる未来はあったんだろうかと、胸の奥に何か詰まらせたような感覚が残るまま部員のリストから灰崎を消した