第3章 帝光に行かないか?
受験当日、受験者同士で一緒に行くなという誰かの言葉を信じ征十郎とは別に向かった
車から降りると暖かい車内とは違う冷たい空気に目が覚める
見送ってくれる運転手さんに手を振り歩いていると、何かが落ちているのが目に入った
『…キャラ物のボールペン?』
「それはオレのだ。返すのだよ」
独特な言葉遣い、パッと視線を上げると高身長緑髪ツンデレアンダーリム黒メガネがいた
長い睫毛だなと思いながら、まるで盗んだかのように扱われていることがカチンとくる
『違うよ、拾ったの』
「そうか、すまなかったな」
『気にしなくていいよ』
「今日のラッキーアイテムの予備だからな、助かったのだよ」
ああ、と1人で納得する。彼は会釈してからスタスタと先に行ってしまう
しかしそこにまたすぐ聞きなれた声が聞こえてきた
「おいさつき、着いてこなくていいっつの」
「ダメ!叔母さんからちゃんと受験番号の席につけるか見てって言われたんだから!」
「ちっ…」
幼さを残す青髪ガングロとまだ幼さがある可愛いと美しいを兼ね備える桃色の髪を揺らす女の子が歩いてきた
まあ幼なじみだしもうこの関係性は成り立っているのかと、話しかける気はないが様子を見る
別に彼らとは関わらなくていいかと緑間の後を追って昇降口を目指し、持ってきた上履きに履き替えているとまた知っている声が聞こえた
「あっちゃ~袋忘れちゃった」
チラリと見ると小学6年生とは思えない身長の巨人が先程まで履いてたであろう靴を持って困っていた
忘れたら嫌だからと、2枚持ってきたのはこの為なんだろうかそっともう1枚ビニール袋を持って近寄る
『良かったら使って』
「いいの~?」
『2枚あるし、平気』
「ありがと~。あーじゃあお礼にこれあげる」
ぱっと渡されたのは飴だった。ゆるい態度で土足を袋に入れ、「じゃあね~」と緩く手を振って去っていく
なんなんだと思いながら飴をカバンにしまい、あたしも袋の封を縛って自分の受験する教室へと足を進めた