第26章 彼の欠席
『征十郎』
「…」
りんごのすりおろしを持って征十郎の部屋へ行くと、返事がなくどうやら寝ているらしい
仕方無くすりおろしを机の上に置き、征十郎のベッドの脇に座る
彼はかなりの汗をかいていて、念のためと持ってきたタオルで拭き取る
おでこに手を乗せると熱さがこちらにも伝わってきて、先ほどとは別の濡らしたタオルをおでこの上に乗せる
『冷えピタ買ってくれば良かったなぁ』
でもそんなことを考えても後の祭りってわけで、少し足をぶらぶらさせる
しばらくするとマナーモードにしていた携帯のことを思いだし、バックから取り出す
「#NAME1#、か?」
『おはよー征十郎
と言っても夕方だけどね』
「…そうか」
『りんごのすりおろし持ってきたけど、たべる?』
「いただくよ」
時間は経ったけれど、恐らくまだ冷たいだろう
はい。と言って、スプーンとすりおろしが乗っている皿を渡すと、ゆっくり起き上がって食べ始める征十郎
『時間帯が微妙になっちゃうけど、食べ終わったら風邪薬飲んでね』
「分かった」
『夕飯、食べれそう?』
「食べやすいものなら」
『分かった
とりあえずあたしは薬飲むための水持ってくるから、待ってて』
「ああ」
征十郎部屋から再び出て、曲がり角を曲がったところで出会ったのは
『…あ』
「ああ、橙崎の娘じゃないか」
橙崎(とうざき)
それはあたしを引き取ってくれた#NAME4#さんと#NAME5#さんの、苗字なのだ