第19章 お返しくれる?
笑いながら彼と話をしているとあっという間に家の前に辿り着く
気を付けてと彼に手を振ろうとすると、いつもなら踵を返す彼が立ち止まった
「落ち着いたらでいいから、冷蔵庫を開けてくれるかい?」
『冷蔵庫?』
「今日中だと嬉しいね」
『分かった。開けたら連絡いる?』
「任せるよ」
『じゃあ忘れてそうだったら連絡ちょうだい』
来た道を戻る彼に今度こそ手を振り、家の中に入る。真っ暗な家に明かりを点けるとリビングのテーブルに今日の夕飯とメモが付いていた
なんだろうと思いながら先に手を洗ってからごはんを温めるためにもテーブルに近づくと、雪さんの綺麗な字が書かれている
『…征十郎君からお荷物だよ?』
なんのことだろうと開けるとケーキ屋さんなどでケーキを買った際にもらえる白い箱に「もう既に1個食べちゃった」と同じ筆跡でメモが貼られている
まったく何なんだと箱を取り出しキッチンの上で開けると、中にティラミスが入っていた
こういうことかと笑いながら既に1つ食べられているティラミスの写真を撮り、彼にお礼のメールを送る
『心臓に悪いから手渡し頼む、っと』
手帳が使い切るのに一番時間がかかりそうだと今日もらったものを並べてから、期限が短そうなものを食べていく
ほろ苦いけれど甘いティラミスも、もらったすべてのお菓子もすべてが美味しい
また来年も彼らとバレンタインとホワイトデーが出来るのか分からないが、出来れば一緒に迎えたいと食べきれなかったお菓子たちを冷蔵庫に仕舞った