第19章 お返しくれる?
「苗字、待っていたのだよ」
『何そんな出入口の真ん前立ってんの!?』
「今日のお前のラッキーアイテム。手帳なのだよ」
むき出しに出されたそれを恐る恐る受け取る。パラパラとめくると4月はじまりらしく今日の日付はなかった
普段ラッキーアイテムなんかもらったことない。つまりはそういうことかと思ったが念のため確認しようと視線を手帳から緑間へ戻す
『…お返しってこと?』
「ラッキーアイテムなのだよ」
『…譲らないなあ、ありがとう』
眼鏡をかけ直した彼は「フン」と言いながら去っていく。全く素直じゃない男だと笑いながら邪魔にならないようにステージにもらったものを置こうと歩き出すと後ろから名前を呼ばれる
振り向くと今度はさつきと引っ張られてきたであろう青峰が立っていた
「ごめんね名前ちゃん部活前に!ほら青峰君、ちゃんと渡して!」
「だー!自分で渡せるわ!ついてくんなさつき!」
「だって青峰君なんも用意してないって言うから」
「渡すことくらい出来るっつの!」
目の前で繰り広げられているいつものやり取りに思わず笑っていると青峰から何かを差し出される
何だかんだちゃんとお返しくれるのかと彼から受け取ると、手の平に袋に入ったマフィンが乗っかっていた
『え、マフィン?』
「青峰君お返し買ったか確認したら買ってないって言うから、一緒に買いにいったの!」
「うるせえなさつき、いいんだよお返しなんて」
『えーさつきのセンスなんだ』
「お金はちゃんと青峰君だからね!」
『2人ともありがとう』
「来年もちゃんとよこせよ」
『…お返しちゃんとくれるならね』
一瞬、来年のこの時期に彼はバスケ部にいるのかと不安になる
ああこんな考えダメだと、すぐに気持ちを切り替えて今度こそステージの上にもらったお返し達を置いた
結局お返しをくれなかった人も当たり前に居たが、キセキたちが全員返してくるのは意外だったと、部活終わりにカバンに仕舞った