第19章 お返しくれる?
「あー名前っち!」
教室に入ると待ってたと言わんばかりに涼太が手をブンブンと振る。やめてくれと考えていると周りから視線が刺さった
持ち主の1人は既に席についている征十郎、大変だねという目で見ている。全くその通りだ
彼の前にいた女の子は居づらそうにしながらその場から去っていき、申し訳ないと思いながら涼太の机の横に立った
『おはよう涼太』
「待ってたんス!これお返し!」
『…ありがとう』
「名前っちのマドレーヌ美味しかったなあ、姉ちゃんにちょっと食べられたけど…」
『その話何回も聞いてるって』
バレンタインの翌日からせっかく楽しみにしてたのに彼のお姉ちゃんに少し食べられたと嘆いているのは片手で足りないくらい聞いている
もう説明いらないのになあと考えながら、彼からもらったお返しが何なのか気になって中身を見るとチューブの何かが入っていた
本人の前で出すのもと迷っていると、彼から答えを押してくれる
「ハンドクリームっス!いい香りなんスよ」
『へえ、センスいいね』
さすがモデルかと考えていると、視線が刺さる
嫌な視線だなとその方向を見ると気の強そうな女の子が楽しくなさそうに笑顔を浮かべてこちらを見ていた
「え、黄瀬君ウチらのお返し、ただのお菓子だったじゃん」
「だってこれ姉ちゃんからのお返しっスもん。はいこれオレからのお菓子」
彼のお姉ちゃんからかと考えていると、追加で手のひら大のお菓子の詰め合わせも渡されウインクもついてきた
ああ、そう言うことかと納得する。彼の話に合わせることにし、渡されたお菓子をハンドクリームと一緒に仕舞った
『ありがとう。お姉ちゃんにもお礼言っといて』
「もちろんっス」
そのまま長話する暇もなく次の女子がやってくる。もうお返しは受け取ったしいいかと彼に手を振り先ほどこちらを見ていた赤い髪の隣に座る
すぐにHRは始まったが、朝慣れないことをしたせいか授業が眠くてしょうがなかった