第17章 赤色の欠席
部屋に入って手をほどき、もらった袋を机の上に置く
のど飴なんかちょうどいいんじゃないいかと思いながら、水滴のついたペットボトルを取り出した
『ほら征十郎、水分取って。水じゃなくてスポーツドリンクでも良いから…うおっ!』
征十郎が子供のように抱き付いて来てバランスを崩し諸共ベッドへと背中から崩れ落ちる。ベッドで良かった床だと痛かった
そんなこと考えていると強い力で抱きしめられる。ぬいぐるみってこういう気持ちなのかななんて雰囲気をぶち壊すようなことを考えていると、彼から名前を呼ばれた
「名前」
『はい』
「…ありが、と」
『うん…無理しないで良いから泣いときな』
ポンポンと動きを制限させられている中で唯一動かせる右手で征十郎の背中を叩く
首辺りに暖かいものが当たり、小さくしゃくり声が聞こえたことから彼も年相応なんだなと無意識に微笑んでしまった
『…せ、征十郎?』
あれからしばらく征十郎の背中を規則的に叩き続けた結果、声を掛けても全く反応が無い。規則的な呼吸に涙が流れ落ちているだけだ
寝たなこいつ。どうしようこの状況と考えながらひたすら天井を見つめる
時計が秒針を刻む音だけが室内に響き、それが何回なったか分からないとき征十郎はあたしの向きごと変えた
『…征十郎?』
抱き枕にされており何もすることもないので、そう言えば征十郎熱下がったかなとおでこに手を乗せる。まだ温かいが39度はないだろう
横になったことで彼の目から涙が伝っている。それを指で拭いながら泣くのは意外だったと、先ほどの事を思い出す
どこか期待やプレッシャーのせいで窮屈そうだとは思っていた。今日はその内の1つを解消で来たかは分からないが、少し肩の力を抜かせられたのではないかと考えている
ただ、ここまで普通の男の子に戻るとは思ってもいなかった
「名前…」
『…はーい』
征十郎の寝言に返事をすると、腕の力が強くなる。これは逃げようにも逃げられないなあなんて考えて、段々温かくなっていく体温に眠気が襲ってくる
征十郎の首元に顔を埋め、腰辺りに腕を回し抱き締め返した
子供の時にも一緒のベッドに寝るなんてしたことなかったが、今日くらいはいいだろう
『おやすみ、征十郎』