第17章 赤色の欠席
『それじゃあ思い立ったら吉日って言いますし、征十郎と改めて話でもどうぞ』
「…改まると照れるな」
『いや、この会話そこの陰に隠れてる彼に丸聞こえだと思いますよ』
「「!」」
『親子でしっかり、話して下さいね』
陰から、顔を少々赤くした征十郎が少しずつ前に来る。体調悪いのにごめんと心の中で謝っておいた
沈黙が続く。どちらから話始めるんだと知らない展開に困っていると、先に征十郎のお父さんが話し始める
「今まで…私の勝手に決めてきてすまなかったな」
「父さん」
「これからはたくさん話す。それにいつでも連絡してくれ遅くなっても必ず返そう」
「は、い」
そう返答をする征十郎の顔はまっすぐ前を見ているが、目は少し涙を浮かべていて、声も少し高くなっている
頑張ってたんだなぁ…としみじみ思って、少しの間だけ目を閉じた
「今からでも話したいのだが会議が入っていてな、また話そう。橙崎の娘よ、礼を言うよ」
『…機会があれば』
「征十郎、代わりと言ってはなんだが、これで体調を治してくれ。お前は、私の自慢の息子なんだから」
「とう、さ」
「では、失礼するよ」
ボストンバッグの中から出したビニール袋を受け取る。中にはスポーツドリンクに生姜のど飴とか、風邪に良さそうなものが入っており,、結局心配してんじゃん
今更優しく出来なくて拗らせてしまっただけか?と疑問に思いながら、あたしと征十郎はその背中を見送った
「名前、『征十郎は頑張ってるよ』」
振り返ると彼はいつもの凛とした態度とは違い、年相応な顔をしていた
バスケ部では見られない、不安そうな表情をしていた。不安なのか重圧なのか分からないがそれを少しでも和らげてあげたくて、彼の首に腕を回す
『だけど少し肩の力抜いても良いんじゃないかな?』
征十郎の頭をよしよしと撫でると、彼の両目から大粒の涙がボロボロと落ち始めてあたしの肩を濡らす
『ほら、部屋戻ろ?あくまでも征十郎は今病人なんだから』
「っ、ああ」
肯定を示した征十郎の手を取り部屋へと足を進める
この家は人が少なく寂しい気がしたけど、少しだけ暖かさが戻った気がすると思いながらのんびりと、征十郎のペースに合わせながら歩いた