第20章 彼の誕生日
あれからほぼ1時間が経過した
え、1時間?
征十郎どれだけ練習してんだろうとは思ったけど、近くに居ないとこんな長いもんなんだ
再びはー。と息を吐くと、先ほどよりも息が白く変化した
雪もほんの少しだけ強くなったが、やはり積もることはなさそうだ、
なんとなく今の自分の気持ちはフランダースの犬の主人公の男の子役だ
まだ1時間しか経っていないし、死ぬことはまずないだろうけども
その瞬間ふわっと背中に暖かさを感じて、自分の腰に両腕が回っていることが確認できた
後ろを確認すると真っ赤な瞳と目が合い、征十郎だと確認できた
『急に抱きつくなんて他の子にしたら悲鳴あげられちゃうよ』
しかし良い意味であり、そのあとは失神するだろう
イケメンは罪だからね
「こんな冷えきってしまって…
呼んでくれれば良かったじゃないか」
『征十郎の自主練を邪魔したくないからさ
なんなら外でと』
「さすがに外では寒いだろう」
『まあね』
あたしの背にキュッと抱きついている征十郎
平常心を装っているが、実は心臓バックバクだ
いきなりあたしの背後から手を取り、自らの手で覆う
「指先までかなり冷えているじゃないか」
『別に平気だよ
あとで#NAME4#さんにハンドクリーム貸してもらって塗るから』
征十郎の体温のおかげか、もしくはあたしの体温が別の意味で上昇しているのか
どちらかの理由かは分からないが冷えた体はだいぶ暖まってきた