第17章 赤色の欠席
現れたのは征十郎のお父さん、申し訳ないがこの人は苦手だ
苗字でも名前でも呼んでくれないし、何を考えているのかわからない
向こうも察しているんじゃないかと思っていると、彼はそのまま話し始める
「橙崎の娘がなぜここに?」
『征十郎のお父さんお久しぶりです
征十郎が風邪を引いてしまったと聞いて、代表でお見舞いに来たんです』
「そうか手間をかけさせたな」
『お見舞い、行かれたらどうですか?』
「いや、大丈夫だ」
『…そうですか。なぜここに?』
「これから遠方で会議が入ってしまってね。泊まりになりそうだから荷物を取りに来たんだよ」
…征十郎のためではないのか風邪のときくらいは顔見せてあげても良いのにと考える
さすがに言うわけにはいかないためニッコリ微笑みながら心の中に留めておいた
『大変ですね』
「君を引き取ってくれた雨の所もそうだろう?」
『でも熱を出したら看病してくれもしますよ?』
「…そう言えば君は、征十郎と入学テストで同じ点数を取ったらしいじゃないか」
また面倒なネタを出してきたなと自分で作る笑顔の仮面にヒビが入るがまだ崩さない
しょせん小学生の問題だ。補正が付いているため取れただけであってあたしの実力ではない。そう、努力した彼とは違う
「征十郎も君のように、赤司に相応しいように育てねばな」
また仮面にヒビが入る。既にふさわしい人物だと思うし、そもそも彼は、彼は
言いそうになった言葉をぐっと飲みこみ、目の前の征十郎パパとちょっとバトルしてみようという気になってしまう。これも補正なのだろうか
『…あなたは、征十郎のことをどう思ってるんですか?』
「もちろん、息子だが」
そうだよね。征十郎が女子には見えないもんね。あ、そういう問題じゃないけど
でもさ、あたしはそんな当たり前のことを聞いてるんじゃないんだよと、本日1番のニッコリ笑顔を浮かべた