第17章 赤色の欠席
彼から測り終わった体温計を受け取り、数字を見ると思わず固まってしまう
『征十郎』
「なんだい?」
『あたしの見間違いかな、39度あるみたいに見えるんだけど』
「名前は目が良いだろう」
『今すぐ寝ようね』
上半身だけ起こしていた征十郎を寝る体制にし布団を掛ける
なんでこんな高い熱なのに征十郎は平気な顔するかなと思いながら買ってきたものを思い出し渡した
『そうだ、これバニラシェイク』
「…寝かせた直後食べさせるのかい」
『テツヤが熱出た時いいって』
起こすわけにいかないのでストローを口元に持っていき飲ませる。気に入ったのか、そのまま飲み続けていた
「確かに、冷たくていいかもしれないね」
『そーなんだって、お昼ご飯食べた?』
「…食欲が無いからね」
『おかゆかりんごのすりおろし作ってくる。どっちがいい?』
「…おかゆは?」
『レトルト』
「じゃありんごがいいね」
『調理器具借りるねー』
一度征十郎の部屋から出て調理場へと向かう。どこに何があるかは分からないが、キチンと整理されているため適当に探せばすぐに見つかった
そこでタオルを水で濡らしたり、りんごの皮を剥きすりおろし器を使い、しゃりしゃりとりんごをすっていく
『…あ』
りんごが小さくになるにつれてすり辛くなったからか、あたしの指を少々切ってしまったみたいで、ほんのり血が出ている。りんごには付着していないため大丈夫そうだ
ちょうどいい機会だと、気になったため目を集中させてあたしの指先を見る。しかしいつまで経っても何も反応を起こさないので、これでやっと分かったのだ
『自分には使えないの、か』
指に絆創膏を巻きつけ、リンゴをすりおろしたものを皿に移し、後片付けをして征十郎の部屋に戻った