第17章 赤色の欠席
春が近くなり暖かくなってきた。もうマフラーは必要ないかなとも考えるが、夜は冷え込みがすごくて帰りはマフラーを手放せない季節
布団から出るのも苦ではなくなってきて、眠たい目を擦りながらリビングに向かうといい匂いがしてくる
「おはよう名前ちゃん」
『あれ…お父さんは』
「さっき秘書の人から連絡あってねー、急に出張ですって
私も今日は帰らないから、鍵を持って出掛けてね」
『はい』
「夜も気をつけてね、戸締まりちゃんとして」
『もちろんです』
目の前にあるトーストを食べ始めるあたしに告げる雪さん。別に珍しいことではない
中学生になったんだしそこまで気にしなくてもいいんだがと思うが、突き放してしまう風に聞こえるのではないかと言わないようにしている
「明日の朝に帰って来れると思うわ」
『…最悪忘れたら友達のとこ泊まらせてもらいますね』
「まあ忘れても大丈夫だろうけどね、持ってってね」
続いてフレンチトーストを焼きながら言う雪さんを見る。料理している姿も楽しそうだ
そこでタイミングを見計らったかのようにメールの着信音がして内容を確認する
『珍しい…』
征十郎から「風邪をひいたようなので休む」と短いメールが読み終わったと同時に席を立ち、準備が終わったところでカバンを持つ
『それじゃ、行ってきます』
「ええ、行ってらっしゃい」
外に出て門を見ると、昔から変わらない表札があり小さく溜め息を吐いた