第16章 チョコばらまく日
目的地に近づくとボールの弾む音がする
コート脇にあたしのより少し濃いオレンジ色のマフラーがエナメルバッグの上に乗っかっていた
足音に気が付いたのかボールの弾む音が止まり、こちらに振り向き笑顔を浮かべる
「部活おつかれー!疲れただろ?」
『ご、ごめん…遅くなっちゃった』
「全然!もっと遅くなるかと思ってたわ」
荒い息を整えながらベンチに座ると和成が自販機で飲み物を買い、そのままこちらに差し出してくる
遅れておいて申し訳ないが走ってきたので水分が欲しく、差し出してきているそれを受け取りゴクゴクと飲んでしまった
『はー…ごめんね、いつから待ってたの?』
「30分くらい前?」
『めっちゃ待ってるじゃん…ホントごめん』
「いいって!1人で練習するいい機会だったわ!」
気も遣えていい男だと先ほどまでいた自己中心的でチョコをぶんどっていった人物を思い出す
だが彼も悪い人物ではないと、疲れた体を休めるためベンチの背もたれに寄り掛かった
「はいこれ、うちの妹ちゃんから」
『ありがとう。これは和成に、こっちは妹にあげて』
「おーマドレーヌ!うまそ!」
『ごめん形のいい奴持ってこようと思ったんだけどバスケ部に全部配っちゃって…代わりに2袋あげるね。妹ちゃんには形良い奴あげて』
「味変わんねえし別に良くね?」
『あーそう言ってもらえるとすごい助かる』
和成にチョコを渡すと代わりにアラザンやチョコスプレーがかかった可愛らしいチョコが入ったラッピングを渡される
今は流石に食べられないとそれを走ったから荒れているカバンの中に仕舞うと、隣からガサガサと音が聞こえてきた