第16章 チョコばらまく日
「はい名前ちゃん!チョコ!」
放課後、部活が終わるとさつきからピンク色のラッピングされた箱を渡された
彼女の料理のセンスを知っているので一瞬戸惑ったが、既製品だということに顔に出さないよう気を付けながら安堵する
『ありがとう。じゃああたしからもあげるね』
「マドレーヌだ!美味しそう!」
『口に合うといいんだけど』
「私も頑張ったんだけど真っ黒になっちゃって…」
むしろ失敗してくれて良かったと本人には口が裂けても言えない言葉を飲み込む。でないときっと食べた後に意識不明の重体になっていたことだろう
体育館の端で騒いでいると青峰がニヤついてやってくる
まだ数はあるし元々頭数には入れているが、どうして彼らは渡すとも言っていないのに寄ってくるんだろうと溜め息を吐いた
「おい苗字、オレの分は?」
『えー…はい』
「なんだよその態度」
『ちゃんとお返しちょうだいね』
「えーオレもお菓子ほしー」
『お返しくれるなら』
「あげるあげるー」
『本当かなー』
冗談ぽく笑いながら紫原に渡すと彼は喜びながら早速食べ始めた
部活終わりだしお腹が空いていたんだろうと納得しながらまだ渡せていないシュート練している緑間と、練習中死にかかっていたがようやく生きて帰ってきたテツヤを呼ぶと、2人とも駆け足で寄ってくる
「なんでしょう」
「自主練中だ。手短に済ますのだよ」
『はいチョコ。解散』
「手短すぎんだろ」
『だって手短にしろって言うから』
「ありがとうございます。嬉しいです」
「…もらってやらんこともないのだよ」
言う通りにしたのになぜ青峰にツッコまれ反抗的な態度を見せていると、なぜか緑間の後ろから灰崎が現れる
練習嫌いの彼はいつもならすぐに体育館から出ていくはずなのにどういう風の吹き回しだと、彼に問いかけた
『何で灰崎までいるんだ。練習終わったらいっつもすぐ帰るくせに』
「これもらったら帰るんだよ」
『もらわず帰れ、あ』
「へっ、ごちそーさま」
テツヤが持っていたものを奪い取って去っていく灰崎をいつも通り変わらないなあとため息を吐きながら、体育館から出ていく彼を背中を見送った