第2章 赤いカレ
そんな約束からしばらく彼と一緒に帰ることになるも、腹を割って話すことは出来ずどこかぎこちない関係が続く
クラブがない日、帰ろうとするとなぜか赤司に呼び止められた
「今日の帰り、寄り道をしたいんだが」
『…どこへ?』
「特にない」
『そっかー…』
「名前が良ければ、少し歩かないか」
『はい』
彼はいったいなぜ寄り道をしたい等と言い出したのだろうと考えていると、赤司はあたしの顔を見ながら再び口を開いた
「名前がおすすめする所に行こう」
『え』
「どこかあるかい?」
『あ、いや…あたし、まだそんなここ、詳しくない…けど』
「それでは、気になる店があったから行ってみるではどうだ」
拒否権ということがない気がして「いいと思う」と返し歩みを進める彼について行く
夕方というのが理由なのか到着した通りには主婦が多くおり、その場にはものすごく似合わない制服と彼が、観察するようにこちらを見ている
「どこか行きたいところはあるかい?」
『え…じゃあ、クレープでも食べる?』
「ああ」
再び歩みを進める彼に着いて行くと、甘い匂い漂ってくる。これだけでお腹が空くのは夕方という時間と人間の性だろうか
「名前は何が食べたい」
『んー…チョコ生クリーム、かな』
「待っていろ」
彼はナチュラルにあたしが着いていくのを遮り、たたたっと行ってしまった
その間暇を持て余していると視線を感じる。その方向へ視線を向けると主婦が会話を楽しんでいるだけだった
そうしているうちに彼はチョコ生クリームのクレープを両手に持って帰ってきた
「はい」
『…あたしの?』
「それ以外に誰がいる」
『え、ありがとう』
お礼を告げて彼からクレープを受け取り、口に含むとチョコよりも先に生クリームの甘みが先に広がる
クレープ生地はサクサクからのもちもち。店員の技術の高さを感じ、思わず笑みがこぼれた
『おいしい!』
「ああ、これはなかなか…」
ハッとして口に手を当てるが彼は特にあたしのを気にせずにもぐもぐとクレープを食べている
その姿が少し可愛らしくて、自分が持っていた赤司のイメージに少しヒビが入った気がした