第12章 おつかい
気が付くとさつきが洗濯が終わったタオルを持って観戦しており、あたしをじっと見つめて話しかけてくる
「名前ちゃんの髪って日に当たるとハニーブラウンみたいだね!」
「あー、おいしそーな色だねー名前ちんまいう棒食べるー?」
『食べる』
「じゃ口開けてー」
『あたしそんなムグッ!』
口を開けきる前にまいう棒を突っ込まれなんとか咀嚼し食べきるが、その前に言われたことが気になった
いくら髪が茶色くなったとは言えハニーブラウンは言い過ぎではなかろうかと考える
「確かに名前の髪は随分と茶色くなったんだね。昔は綺麗な黒だったのに染めたのかい?」
『染めてない』
「へー、その髪の色って染めたんじゃなかったんだー。オレてっきり染めたのかと思ってたー」
「髪は茶色なのに、瞳の色は真っ黒なのだよ」
『…変?』
「変ではない。名前によく似合っているよ。詰み」
『わ!また負けた10連敗!』
「もう1回やるかい?」
『将棋崩しにしよ』
ちらりと時計を確認すると既にかなり時間がたっている。恐らくこの後少し練習した後は自主練の時間になるだろう
そもそも一試合終わったのに、彼らはいつまで見ているんだとようやく気付く
『いつまで将棋見てるんですか?』
「やべ」
彼らも言われて気がついたのか、急いで練習再開の指示を出すコーチと虹村先輩
その指示のおかげが、あたしと征十郎の周りから人がだいぶ減った
「そういえば名前はカラーコンタクトを着けてたりするのかい?」
『え、着けてないけど』
「先ほど、名前の目がオレンジ色に見えたのだが」
『…気のせい、じゃない?』
「そうか」
征十郎が見間違うはずはないから、彼はあえて深く突っ込まなかったのだろうと思う
そしてそれが何を意味しているのか、まだ気が付きたくなかった
その後、1回も勝つことが出来ずにこの日の練習は終了する
翌日から回復した征十郎もあたしも通常通り部活を行った