第12章 おつかい
『はぁ…』
「名前、急にどうしたんだい?」
『手首、怪我してるでしょ』
「…なんのことだ?」
『嘘吐いてもバレるって。なんか征十郎の怪我してる部分がたまに光って見えて…光って見える!?』
「急にどうしたんだ」
自分が言っていることに驚いた。怪我してる部分がたまにだけど光って見えるのは本当
なんだこんな能力はとその場に頭を抱えてしゃがみ込むと後ろをついきていた征十郎も立ち止まる
「名前?」
『ああ、ごめん征十郎。かなり取り乱してた』
「そのようだね」
気のせいだと信じたかったが新入生歓迎会の鬼ごっこ以来、髪と目が少しずつ茶色く変化している
別に染めたりカラコンをつけているわけでらないんだが、一番わかりやすい例えで言うと今はウーロン茶とかそこら辺の色
『あーもう、とりあえず征十郎は手首怪我してる!』
「見事だね」
『副主将が怪我して無理しちゃダメでしょ』
「…全くその通りだ」
余計なことは考えないようにしたまま歩き続け部室に辿り着き、椅子に彼を座らせて救急箱を取り出す
体育館でやってもよかったかもしれないが、目立つのは彼が嫌がるだろうと思って適当なところに救急箱を置いて湿布を取り出した
『ほら手首冷やすよ』
「よく怪我していると分かったね」
『そうね』
ペタリと征十郎の左手首に湿布を貼り、上から粘着テープを巻く
利き手じゃないし若い。1日休めば治るだろうと、どこで覚えたか分からない知識が脳に浮かんだ
『出来たよ』
「ありがとう」
『今日は練習休んだ方がいいんじゃない?』
「それは名前も、だよね?」
思わず目を見開く。確かに先ほどテツヤと倒れこんだ時に変に足を捻ったらしく足首を痛めている
彼は歩き方だけでそれがわかったのだろう。人並の感想だがすごいと思った