第2章 目が合うその先の欲望と *
不機嫌そうな声色に私は焦りながら首を横に振る。
「嫌なんかじゃっ…ただ…勘違いしそうになるので…」
違うならこんなことしないで欲しい…。
そう言おうとした時、抱き締めている腕の力が強まって苦しさに眉を顰める。
「っ…へいちょ…」
「…勘違いしても構わねぇが?俺は何とも思わねぇ奴に手を出したりしねぇ。」
兵長の言葉に驚きを隠せずに目を丸くする。
それって…
「じゃ無かったら寝室に入れたりしねぇよ。」
「でもっ…癒してくれるかって…」
てっきりそういうのが目的であんな事したんじゃないかって…
唇を噛んでいると兵長は私を抱き締めたまま頭を撫でながら「あぁ…」とバツ悪そうに呟き言う。
「あれは…口実だ。てめぇと二人っきりになれるチャンスだと思って言った。まあ…変に勘違いさせちまった俺が悪いが…」
「…!本当ですよ…普通に言ってくれればいいのに…」
「…そうだな。悪かった。」
チュッと額に口付けられトクトクと速まる鼓動。
だけど…
「…でもいつからですか…?私と兵長あまり話したりしてこなかったですよね?」
挨拶を交わすかちょっと世間話したり、訓練の時に指導を受ける時くらいしか接点が無くて…
私のどこを気に入ってくれたんだろ?
「そうだが…一目見たときから俺はお前のこと気に入っていた。」
「へ…?そうなんですか…?」
「ああ。クソ真面目で優しくてかといって意志が弱ぇ訳じゃなく歯向かってくるとこもある。たがその反面、俺が叱れば涙を浮かべて唇を噛むお前の姿に可愛いくていつの間にか目が離せなくなっていた。」
兵長の告白に私は恥ずかしくて顔が真っ赤に染まる。
「だからもっとお前の事が知りたくて触れたくて堪らなかった。それが今こうして触れられているのが俺はすげぇ嬉しい。」
宝物を扱うかのように今度は優しく腕の中へ引き寄せ抱き締めてくる。
そんな兵長に私はもうドキドキしっぱなしで…。
固まっている私にトドメと言わんばかりに耳元で囁く。
「手を出しちまった後で言うのもなんだが……好きだ。」