第9章 愛とこの熱さと温もりの意味【中編△】
しがみつくように顔を胸元へと擦り寄せると兵長の匂いが鼻腔いっぱいに広がって…
何とも言えないホッとした感覚に陥った。
兵長はいきなりの事に戸惑いつつも私の頭を撫でながら声を掛けてくる。
「…どうした?何かあったのか?」
「…っ、」
さっきの事が頭を過ぎって男から触られた時の何とも言えないあの気持ち悪さと不快感が蘇ってきて軽く体が震える。
それを抑えるように兵長の服を握り締めると、何かを感じ取った兵長が空いた手で背中を撫でてきた。
「…、ここではあれだ。部屋に入らねぇか?」
「…ん、」
素直に頷けば兵長は意外だと思ったのか、軽く目を見開く。
「…なら部屋のドアを開ける。少し離れろ。」
そう言われてしまい、私は渋々体を離すと兵長は私に背を向けドアノブを握った時、どうしても不安で再び腕に手を伸ばし握る。
気付いた兵長が顔だけこちらに向け落ち着かせるように優しく言葉を掛けてきた。
「大丈夫だ。何処にも行ったりしねぇから安心しろ。」
あまりにも柔らかな声色で安心させるように言われさっきまでの不安が一気に消えていく。
胸の中の変化にぎゅっと胸元を掴めば、ガチャっとドアが開く音がした。