第9章 愛とこの熱さと温もりの意味【中編△】
知らない自分に不安になりながらも嫌悪感と気持ち悪さに耐えながら手で男の胸元を叩き抵抗する。
必死になって体を捩っては、唇が離れた隙に顔を背け嫌だという意思を見せるが…
男は全く動じず耳元へ唇を寄せて囁かれた。
「……大丈夫だから。」
「っ…!?」
ゾクリと背筋を悪寒が走り抜ける。
声も何もかも…体が受け付けていないことに私はびっくりして目を見開く。
そして…何故か頭の中で思い出すのはあの時兵長に抱き締められた腕の中と声で。
__『大丈夫だ。落ち着け。』
__『。』
兵長…。
会いたい…声が聞きたいっ…
そう思った途端、頭の中が冷静になってきて男の足を思いっきり踵で踏み付けた。
「っ…!?いっ…!」
痛みで私を抱き締めていた腕が緩み、その隙に私は男の腕の中から抜け出して扉を開けて部屋を出た。
振り返らずただただ…兵長の部屋へと走って…
自分の思いのままに歩みを進めていけば、丁度部屋に帰ってきたのか扉の前に兵長が居た。
「っ…ハァ…兵長っ!」
「!…?」
驚いた兵長が私の方へと顔を向けた時、手を伸ばして勢いよく兵長に抱き着いた。