第11章 仲間
あの後、遊郭を発ち煉獄家へ戻る途中
解毒剤をもらうため、私たちは蝶屋敷に寄った。
しのぶちゃんは杏寿郎さんに抱きかかえられた私を見て一瞬驚いた顔をしたけれどすぐにいつもの澄ました顔に戻って、奥から解毒剤を出してきてくれた。
正直、その時のことは良く覚えていない。
薬のせいもあるけど、何より杏寿郎さんの足が速くて…
目が回ってしまっていたのだ…。
だんだん気持ちが悪くなった私は、そのまま吐き気に耐えるのに精いっぱいで、
…二人が何か話していた気がするのだけれど…忘れてしまった。
「ねぇ、そういえばあの時、二人で何を話してたの? 私よく覚えていなくて…」
不意にその時の話の内容が気になったので、聞いてみた。
「気になりますか?さん。あの時はですね…」
「む!なんだったか、俺も忘れてしまった!
…胡蝶、俺は少女たちを手伝ってくる!」
急に大きな声でそう言い切った杏寿郎さんは、ビュンッとお花見の準備をしに行ってしまった。
彼の胡散臭い行動と、あらあら とあきれ笑うしのぶちゃんに、なんだか自分だけ取り残されている気がして呆気に取られてしまった。
(私が口を挟めないようなことを話してたのかしら…)
柱どうしで付き合いも長い二人のことだ、
私なんかよりずっと深くお互いのことを理解しているのだろう。
しのぶちゃんに再び問うと、
彼女はまた軽やかな笑みを浮かべて
「煉獄さんから聞いた方が、いいと思いますよ」とだけ教えてくれ、みんなのところへふわっと行ってしまった。
結局あの時の会話が何だったのか知ることができないまま、しかも二人の不思議な行動に理解ができないまま
私は今自分が "寂しい" という感情をもっていることしか分からないでいた。
「おー!久しぶりだなぁ、元気だったか?…なんだよ、お前胸に手ぇあてて突っ立って。俺様の登場に感動したってか?」
「宇随さん…!ご無沙汰してます!」
振り向くと宇随さんがいた。彼とは遊郭での対戦後に見舞いに行ったきりで、それ以来会っていなかった。
隻眼となった彼だったが、なんだか以前よりもまた男前になったように見える。
「あの…そちらの方は…?」
宇随さんはきらきらした笑顔のままで、一向に隣の人の紹介をしてくれなかったので私から尋ねた。