第10章 情景
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「んっ……はぁ……」
依然苦しそうに身をよじる。
"" と、声を掛けようとしたその時、
彼女の細い両腕が すっ と俺の肩に触れたと思ったら…
「………っ!」
俺の首に腕を回してきた。
の吐息が首元にあたってこそばゆい。
「……むぅ…」
よもやよもや……だ…。
どうしたらよいかわからず、全身が硬直した俺だったが…
「……きょ…じゅろ…っ」
…よもや、俺の気を知ってか知らずか
はさらに回した腕に力を入れ、体を密着させてきた。
なにやら鼻から垂れてきた。
それをぐっと拭うため、拭うために俺はそれを拭った方ではない腕をの背中に回し、彼女が俺から離れないよう抱き返した。
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「おーう、わりぃな遅くなって。
……なんだ?こりゃどういう状況だよ?
しかもお前なんか鼻のとこ血ぃついてんぞ。」
「久方ぶりだな、宇随!
うむ…が危険な目にあっていたので、助け出した。」
「煉獄…お前、もしかしてそれ野暮なことじゃなかったか?」
俺を何やら引いた目で見る宇随。
野暮なこと…
…いや、は確かに嫌がっていた。
あの時、緋縮緬の襦袢から伸びた 白く細い足を煙管の男が撫で上げているのを見て激昂しそうになった自分がいた。
気づいた時には男を気絶させていた。
野暮なことをしたとは…思ってない。
「…宇随。をこの任務から外してくれないか。」
「はあ? それは困るぜ、ただでさえ女の隊員が少ねぇのに。
しかも結構いい仕事してくれるんだぜ。」
思いきり顔を歪ませて俺の頼みを断る宇随。
彼の言い分はもっともだ。だが…
「頼む…。 …そもそも、に客は取らせないという約束だったではないか。
…君がそう約束してくれたから俺は継子のを君に預けたんだ。」
今度は苦虫を噛み潰したような顔になる。
悪いがこちらも引けないのだ。
「それはよぉ、流れでそうなったというか…。
…………すまねぇ。」