第10章 情景
"京極屋で消えたのは、その男衆だけじゃねぇ"
"立て続けに遊女の足抜けがあったって聞いてるぞ"
"噂だと、蕨姫花魁が絡んでるらしいんだ"
(蕨姫花魁…)
自室に戻った私は部屋の窓を開け、
今日お客たちから聞いた話を脳内で反芻しながら
眼下の煌びやかな風景を眺めていた。
見世に出始める以前よりもさらに忙しくはなったのだが、
こうして客とつながることで鬼の情報収集はやり易くなったように思える。
(明日、宇随さんに定期連絡の書をしたためよう…)
窓枠にもたせていた頭が眠気でカクンっと落ちたところで、私はそう思い今日は眠ることにした。
(それにしても、杏寿郎さんと千寿朗君は元気かしら…
会いたいわ……)
程よい疲労を感じながらも、
もうしばらく会えていない兄弟の快活な様子と煉獄家での生活がたまらなく恋しくなった私は、
布団の中で横向きになり身を小さくして眠りについた。
ーーーーー