• テキストサイズ

【鬼滅の刃/煉獄】真冬の夜の夢

第10章 情景









杏寿郎さんは次の日の夕方に戻られた。


昨日千寿朗君とあんな話をしたからだろうか、

「ただいま戻りました!」という杏寿郎さんの声が聞こえて、私はいつも以上にほっとした。



(杏寿郎さんが簡単に怪我を負うはずないのに…)



と心の中で自嘲しながら、千寿朗君と玄関へ向かった。


「おかえりなさい、兄上!ご無事で何よりです!」
「おかえりなさいませ、杏寿郎さん。長い道のり疲れたでしょう。」

「うむ!二人とも、出迎えありがとう!」

「お夕飯はもう少しでできるから、ぜひ先に体を流してきて?」

「あぁ、そうさせてもらう!すまないな!」



お風呂場に向かう杏寿郎さんを見届けてから、私と千寿朗君は台所に戻り、夕餉の準備を再開した。



コンコンコン…

パチッ…パチ…


私が味噌汁の具を切る音や、薪が燃える音が室内に響く。


なんて平和なのだろう。


この空間の中でこうして誰かのためにご飯を作っていると、自分の中の殺伐な気持ちがどんどんしぼんでゆき、

いっそ鬼の存在など忘れてしまいそうになる。


ぽわぽわと鼻歌でも歌ってしまいそうにいると、



「あっ、醤油がきれてる…。さん、俺ちょっと裏に醤油をとってきますね!」

と千寿朗君は言い残し家の北側にある倉庫へ行ってしまった。


(調味料の予備は倉庫に置いてあるのね…)

なんてのんきなことを考えながら、ほうれん草をざく切りにしようとしたら


「痛っ…」


私としたことが、指を切ってしまった。

調子に乗っていたと思いながら傷口を舐めようと手を口に近づけた時、



ガッシャンッ!!


近くで陶器の割れる音がした。

驚いて音がした方へ顔を向けるとそこには…



「瑠………火………」



槇寿郎さんが私を見て立ち尽くしていた。
足元には割れた酒瓶があった。

私は事態が呑み込めないまま、槇寿郎さんに何て声を掛けようかと往生していると、ふらふらと槇寿郎さんはこちらに近づいてきた。


「…瑠火……」


瑠火…誰のことかしらと疑問を浮かべるが、槇寿郎さんの表情は、目は、どこか悲しそうで私を見ているようで見ていないようだった。




/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp