第9章 こんにちは千寿朗君
時が経つのは早いもので、私が煉獄家に来てからもう半月が経とうとしている。
ここでは日中は鍛錬、夜は鴉から指令が入り次第で任務に向かう生活をしている。
あの日……稔さんが亡くなった後も、こうした生活をしていたなとふと思い出す。
「…さん?」
「ん?あっごめんね、…そうしたら今度は左腕を…」
でも今はもうあの時とは違う。
私の側には千寿朗君や杏寿郎さんがいる。
私はひとりじゃない。
「なるほど、こうすれば少ない力で大きな衝撃を与えられるんですね!」
同じく鬼殺隊士を目指して日々鍛錬を頑張っている千寿朗君。
私の体の、傷の治りが早いことだけでなく、強靭な体をもっていることや日光に弱いことなど、ほぼすべてのことを杏寿郎さんから前もって聞いていたらしい。
千寿朗君は私から身のこなしや素手での戦法を習いたがった。
彼の剣術にも活かせるものがあると思った私は快諾し、今のように稽古をつけてあげているのだ。
この子のために、私にできることなら何でもしてあげたい。
彼は不思議な子だ。短期間で人にそう思わせる魅力がある。
…どうしたらこんないい子に育つのかしら……
なんて、のんびり考えていた私は、千寿朗君の表情に影が落ちているのに気が付かなかった。
「…さん…、あの…。」
「…ん?どうかした?」
なにか、稽古のつけ方に思うことがあったのだろうか
私は彼を威圧しないようゆっくりと向き直った。