第8章 面影
人から物を贈られるということは、なんとも嬉しい。
離れていても、それを手に取るたび、身に着けるたび
その人のことが思い出され、側にいるような気持ちにしてくれる。
またその物に、贈り手の相手を思う気持ちが込められていることを感じられるのも良い。
呉服店を出た後、私はそんなことを考えながら煉獄さんの隣を歩いていた。
……チリン
少しひらけた場所に差し掛かった時、
幾何学模様の護謨毬(ごむまり)が番傘の陰に入ってきた。
あっ…と言ってそれを拾い上げ、顔をあげると幼い女の子が走り寄ってきていた。
しゃがみ、その子と目線を合わせて
はい、と毬を手渡すと
私の顔に何かついているのだろうか、
女の子は「ありがと…っ」と
恥ずかしそうに毬を受け取りながらもじっと私を見つめてくる。
その様が愛らしく、どうしたの?と首をかしげてみると
くいっと私の着物の袖をひっぱり、「かわいっ」と言葉を発した。
(わたしの…着物が…かわいいと………)
きゅーーーんっと、
蜜璃ちゃんではないが、女の子の可愛さが私の胸に刺さった。
「ふふっありがとう、あなたの着物も、とってもかわいいわ!」
そう言うと、女の子はニコーっと笑って遊び場に戻っていってしまった。
女の子の着物は、桃色地に梅の花の模様だった。