第8章 面影
せっかくだからそのまま着て帰らないか?という煉獄さんの提案により、私は着替え部屋で隊服からあの白百合色の着物に着替えた。
肌に掠る生地の感覚が心地良い。本当に良いものなのだろう。
帯は、煉獄さんの勧めもあり赤いものを合わせることにした。
なんだか煉獄さんが側にいるようで安心する。
顔をあげ姿見に映る自分と目が合った。
いつもと雰囲気の異なる姿に落ちつかないが、着物の小さめの花柄がとても可愛らしく心が跳ねた。
「、どうだ!着られたか?」
煉獄さんの声で我に返った私は、今出ます!と言い
変ではないだろうかというわずかな不安を拭うように扉を開けた。
私を見た煉獄さんは、はじめ何も言葉を発しなかった。
やはり似合っていなかったのだろうか…
恥ずかしさの涙で視界が霞んだ。
「…や、やはり羽織と同じ青のき「可憐だっっ!!!!!!!」」
「えっ?ちょ、ちょっと煉獄さん…!」
煉獄さんの叫びにより店内にいた人全員の視線が私に集まる。
今度はその恥ずかしさで涙が出てきた。
「あらあら~~!ほんっと!可愛いわっ!
やっぱり私の見立てに狂いはなかったわね」
女将さんまでしたり顔でそう言う。
「髪の毛もよかったらまとめて差し上げるわねっ!いらっしゃって~」
あまりの羞恥で着替え部屋に戻ろうとした私の腕が女将さんにとられ、側の椅子に座るよう促された。
煉獄さんは楽しそうに腕を組んで側に立っている。
女将さんに髪を預けてされるがままいると、さっと簪をさされて「はいっこの簪はうちからの贈り物です」と言われ手鏡を渡された。
髪をまとめてもらったことにより、うなじが出てすっきりして見える。
私は女将さんにありがとうございます!と大きな声でお礼を伝えた。
「あ、お着物の代金を…」
「ふふっそれなら…」
女将さんの視線の先には煉獄さんがいた。
なんと、私が着替えている間に支払いを済ませていてくれたようだ。
「、その着物は俺から贈らせてくれ。これから共に頑張ろう!」
簡潔だが力強く熱い言葉。
嬉しくて、嬉しくて、
「…っ、煉獄さん…。」
あまりの感動で出てくる涙を堪え、心からの笑顔でお礼を伝えた。